2021年8月16日にはじめてエヴァ・ピラッツィ・ゴールドを張ってみましたので、今日はその使用感などについて、書いておこうと思います。
他の方々から聞いていた印象
プロのオーケストラで弾いていたときに仲間だったよいヴァイオリン奏者が言っていたのは、とてもレスポンスがよく、いい弦だということ、そして、私の尊敬する先生も最近この弦を使っているので、使用するのをとても楽しみにしていました。
張力
エヴァ・ピラッツィ・ゴールド を張った翌日、ブリッジがかなりスクロールの方に傾いていたことからも、この弦のテンション(張力)が強いことが感じられました。データとしては以下の通りです。
Evah Pirazzi Gold (Medium)
E string 8.0kg / 17.6lb
A string 5.5kg / 12.1lb
D string 4.7kg / 10.3ib
G string 4.8 kg/ 10.5lb
安定するまでの時間
弦が落ち着くのはとてもはやかった印象です。翌々日くらいにはもう安定していたように記憶しています。
使用感
最初に書いた通り、この弦はとてもよさそうだ!という期待を抱いていたのですが、張ってすぐに弾いてみた感じは、正直 弾きにくい でした。弾きにくいという印象がすでにあるからか、耳元で聞こえてくる音色もすんなりと受け入れられる感じではなかったので、これまで使ったことがある弦(ドミナント、ワンダートーンソロ、オブリガート、ヴィジョンソロなど)とは とにかく 違う という印象でした。
ここのところ、音が裏返るというような経験もほとんどなかったのですが、この弦の使い始めには、弦の扱いに慣れずにそのようになることがときどきありました。
だいぶ前に、エヴァ・ピラッツィを使ったこともありましたが、そのときも、音が大きく、金属的 な印象があり、好きになれずに、すぐに別の弦に張り替えてしまった経験があります。やはり同じエヴァだからか、どちらかというとそれに近い、同じような系統で、エヴァ・ピラッツィ ゴールドは、エヴァ・ピラッツィを少し丸く、温かくした程度のものとつい短絡的に考えてしまいます。
これは勝手なただ単なるイメージなのですが、弦の外側から内側に振動が伝わるのに時差があるかのような、外側と内側で鳴り方が違っているような???変な感じがして(笑)私自身が求める complexな音 ではなく ヘンなcomplexity がある気がした瞬間があったことも覚えています。
現在、弓の毛もだいぶ古くなってきているのも確かですし、ストレスが多い毎日なので、このような背景もある程度印象を左右しているかもしれませんが、正直、この弦をすぐにもう一度使うことはないかな、という気持ちです。ペーターインフェルドも数年後に使ったときにはいい印象に変ったので、そうなることもあるかもしれません。
以前はオーケストラのお仕事と平行して、ピアニストとデュオとして室内楽を演奏することが多く、ピアノと一緒に なので、ある程度の音量も必要だったのですが、今の私は、生徒たちとの時間が主で、ときどきブログのため(生徒さんたちのため)に動画(録音)をつくるくらいなので、それほどの音量も、音を遠くに届けるという必要もなく、自分の耳元での印象や弾き心地を大切にしたいかな、というところです。
弦の比較(ペーターインフェルド vs エヴァ・ピラッツィ・ゴールド)
個々のヴァイオリンによって弦の印象はとても大きく変るものですし、精密な比較はできませんが、大体の弦の印象をつかむ程度のことはできるかな、と、これらの弦を張ってから一ヶ月以内くらいに録ったものを並べてみます。
ペーター・インフェルド(G,D,A)+エヴァ・ピラッツィ・ゴールドE弦
この弦のコンビネーションを使っているのが以下の テン・ハヴ「アレグロ・ブリランテ」です。
https://www.youtube.com/watch?v=kL5Ar_kFxLc&ab_channel=dearviolinstudents
エヴァ・ピラッツィ ゴールド(セット)
この弦を使っての最初の録音は以下の ヘンデル「私を泣かせてください」で、内心、弾きにくいなぁ、扱いにくいなぁと感じながら弾いています。慣れずに音がひっくりかえったりしているところがあります。
https://www.youtube.com/watch?v=zkNsZ_Ejapc&ab_channel=dearviolinstudents
この弦を使ってのふたつめの録音が リュリ「ガボット」です。弦の扱いに少しずつ慣れてきていますが、まだちょっと音がひっくりかえったり、音程もね。(笑)
https://www.youtube.com/watch?v=a5dN3-J_tbw&ab_channel=dearviolinstudents
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『金属的な感じ』、よくわかります。英国のブリストルに『レッド・ロッジ』という建物がありまして(Youtubeにも出ています)、そこへ入ると四方がオークのウッドパネルで、独特の音空間があります。ヘンデルの室内楽はこういうところで演奏されることも念頭に置いていたのかな?と、そこへ行くといつも思います。ある種の弦楽器の音はその室内で大きく表情が変わりますね。私は『赤ワインのボディの強い感じ』のまろやかな音が好きなので、この弦の音はかなりモダンな会場を想定して、曲想も今風のもの向きなのかも。たぶん、LPと生演奏で育った世代と、CDとパソコン・デジタルの音で育った世代は、音の好みが違うかもしれませんね。
輪廻一道さま、
コメント、ありがとうございます!
「赤ワインのボディの強い感じ」ってとても素敵な、あ、なんとなくわかる!!という印象のいい比喩ですね。さすがです!
今や、弦も本当にいろいろなものがあり、なかには、金属的で音が大きすぎる ような印象のものも。
しばらくたって、その弦の一番よいときではなく、劣化したくらいでちょうどよかったりするかも?なんてヘンなことを考えたりしています。
「赤ワインのボディの強く感じのまろやかな音」、それに近い音をだすには、私の楽器にはどの弦なのか、探すのにお手伝いいただかないといけないかもしれません。(笑)
Youtube で Red lodge みつけました。歴史を感じる空間ですね。その場に赴いて、空気を感じてみたいです。
最近はヴァイオリンや弓の(とくに弓の)材料となる木もなくなってきてしまっているようです。
今や弓はカーボンのものも多くなってきていますし、ヴァイオリンですら、カーボンのものがあるほど。
今後どんな風になっていくのかしら、自分の楽器も大切にしないと、という気持ちが高まります。