今日はいただいたご質問にお答えしたいと思います。

アマチュアのオーケストラでご活躍の方からの質問:

リズムがあまいってよく言われるんですが、どうしたらよいでしょうか。

リズムは音楽の3要素(リズム、メロディー、ハーモニー)のひとつ、とても大切なもので、とくにオーケストラで演奏する場合、正確であればあるほどよい、と私は考えます。

ただ、オーケストラのレベルによっては、メンバーの方々がみな同じような「甘さ」でリズムを演奏しているとしたら、それはそれで「合う」ことになるので、それはそれで あり かも?(笑)

でも、できれば正確に弾きたい、弾けるようになりたい ですよね。たぶん、そういう向上心がおありなので、このような質問をしてくださったのだと思います。すばらしいことです! そして 質問をありがとうございます。

リズムがあまい ってどういうこと?

日本語で リズムがあまい というのは たぶん 付点のリズム、とくに 付点8分音符と16分音符のコンビネーション が ご自身の演奏から聞き手に伝わりにくくなってしまっている ということだと思います。

音の長さの割合

リズムの正確性を求める際には、あたまのなかでそのリズムをきちんと分割して考えることが重要です。

付点八分音符と16部音符のコンビネーションの場合、ベースとなるのは16分音符。指揮者のひとふり(一拍)の最中に、あたまのなかで 1,2,3,4 と数えていないといけません。付点8分音符と16分音符の長さの割合は 3:1 です。

上記の 付点8分音符と16分音符のコンビネーション とよく比較されるのが、左のリズム。

このリズムの場合は、3連符がベースになっているので、一拍を3つに分割して数えなければなりません。音の長さの割合は 2:1 です。

これら2つのリズムを きちんと弾き分けられるかどうか、指揮をみながら、拍と拍の間をご自身でしっかりと分割して考えながら演奏できるかどうか が大切です。

そしてとても大切なことが。。。

リズムを正しく感じられていても、音がそのようにでているかどうか

頭ではリズムを正確に理解し、感じられているけれど、それが実際の演奏中に、音となってあらわれているか というのは実はまた別の問題だったりします。頭で感じられていても、音がそのようにでていない。これは私自身、若い頃にぶちあたった問題でもありましたし、そのことに自分で気づくのに時間がかかりました。私がそれに気づいたときの アハ!体験 はかなり衝撃的でした。

私の感覚からいうと、頭で感じたことがシグナルとなって神経を通って腕に伝わるまでに時間がかかっているような気がした のです。そのシグナルを伝えるための俊敏さというか、神経伝達の速さを 何とか速めなければならない。感じているリズムを 瞬時に音として表現する、感じていると同時に音としてだす ということの大切さ。 その必要性に気づき、そのことを考えながら努力を続けているうちに、だんだんと正確性を得られたような気がします。感覚を磨き、鍛えていかなければなりません。

私がプロのオーケストラで弾いていたころ、ジュリアード音楽院を終えたヴァイオリン奏者の方とスタンドをともにしたことがありました。彼女が妊娠していたときのことでした。彼女は「妊娠してから感覚がにぶった気がする」とおっしゃっていました。とくにオーケストラでの演奏は細心の注意、瞬発力なども必要で、俊敏な研ぎ澄まされた感覚が必要です。彼女はそのとき多くを語りませんでしたが、私にはなんとなく想像できるのでした。また、この記事を書くことで そのときに彼女の言葉が思い出され、感覚を研ぎ澄ませる努力 が必要だったことを思いだしています。

一緒に練習してみましょう!

付点8分音符と16分音符のコンビネーションを弾くときも、3連符のリズムを弾くときも、最後の音を上記のようにテヌートがついた状態ではっきりと弾くことでよりリズムをはっきりと表現することができます。

a の準備練習として b を、c の準備練習として d を使うことができますし、b, a, b, a… もしくは d, c, d, c… と繰り返す練習もできます。

自分自身で録音をしてそれを聴いてみたり、頼れるご友人や、先生に聴いていただき、客観的に判断する、聴いている人がご自身の演奏からこのリズムを聞き取れるように演奏できているか ということもとても大切です。

その他のリズムも

また 弾いている間、同じテンポを保てるかどうか というのもリズムの基本。

今回は、ご質問のこたえとして、上記2つのリズムに焦点をあてましたが、その他、このリズムの準備としても、8分音符も正確に感じ、弾けなければなりませんし、これらが安定してきたら、5連符や6連符などに挑戦するのもとてもよいことです。

エチュードや曲を使ってのリズムの強化

簡単で短いエチュード、例えば、ウォールファールト 60の練習曲 43番、44番 などは このようなリズムの問題の解消に役立ちます。また、学生用の協奏曲も、リズムの勉強におおいに役立ちます。ぜひ活用しましょう。

よろしければこちらもどうぞ:

アッコーライ ヴァイオリン協奏曲 イ短調

[練習のてびき] ウォールファールト 60の練習曲 42番 アンダンテ

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2 thoughts on “リズムがあまいってよく言われるんです

  1. 『頭で感じられたことが神経を伝わって腕に伝わるまで時間がかかる、、、』これは、じつは剣術の達人は頭からの指令で腕が動いていないことが知られています。人間の身体は『意志ですべてが動いているわけではなく、多くのところがある種の自動操縦になっている』。その反射的、直観的に動く部分は、大脳の表面部分ではなく、もっと深い大脳基底核と言われるところからの指示で動いていることがわかっていて、多くの分野のプロの人たちは、大脳皮質の部分だけでなく、この大脳基底核の部分を盛んに使って直観的にやっていることが、科学的に知られています。ここでは迷わない。考えない。つまり、無意識のところを上手く使って、的確にやる。そこへ『染み込ませること』が重要なのでしょう。昔、ミニマル・ミュージックの人たちの手伝いをしていたことがあって、これは音のモワレみたいなものが出るためには、正確なリズムが必要。一方で電子機械の正確さだけでは『ノリがでない』こともわかっていました。そのリズムの『染み込ませ』は、なにか、現代科学とチームアップして、新しい練習方法が出来るかもしれないと思います。

  2. Roughtonさま、
    コメントありがとうございます!
    こちら見過ごしておりました!
    「無意識のところを上手く使って、的確にやる。そこへ『染み込ませること』」
    なるほど。きっとこういうことなのですね。
    私は若い頃、このことを感じたとき、自分の反応があまりに遅くてびっくり でした。
    「電子機械の正確さだけでは『ノリがでない』」
    これもおっしゃるとおりです! だから私たち人間が音楽を奏でないと芸術にはなりえませんね。
    ときどき、レッスンの際に、生徒たちに言うんです:
    あなたが感じていることと同じことを私が体感できれば、もっと違う言葉を使うなり、別の方法で説明するなりして、より速い問題解決に導けると思うし、同時に、私が感じていることをそのままあなたが感じることで、あなた自身が切り開いていくことすらできる。そんなテクノロジーがうまれると思う。って。(笑)

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