鈴木の2巻にはリュリ ガヴォット がおさめられています。今日はこの曲の勉強をはじめましょう。
リュリについて
ジャン=バプティスト・リュリ(1632-1687)は中期バロック時代の作曲家です。もともとイタリア人でしたが、のちにフランス国籍を取得しています。ルイ14世にとても気に入られて、おつきの作曲家として任命されたうえに、踊り手としても仕えるようになった人です。
リュリ 「ガボット」 は実はリュリの作品ではない?
「おもちゃのシンフォニー」の記事でもお話ししましたが、クラシックの作品のなかには、作曲者が定かではないことも多くあり、音楽学者たちが常に研究・調査を続け、情報は常にアップデイトされます。
この作品の作曲者はリュリとなっていますが、実はリュリの弟子である マラン・マレ の作品 ヴィオール(ヴィオラ・ダ・ガンバ)曲集1巻の第2組曲ニ短調の24曲目の「ロンド」だということがわかっています。この曲の場合の間違えの発端は、ドイツのヴァイオリニスト Willy Burmester がこの曲をヴァイオリンのために編曲した際にリュリの作品として発表してしまったことのようですね。
マラン・マレの作品として、この曲を紹介してくださっている動画をみつけました。こちらに動画を貼らせていただきましょう。楽器も当時から何百年もかけて変化しています。そのような楽器の歴史を感じる機会をもつためにも、ヴィオラ・ダ・ガンバとチェンバロンによる演奏に耳を傾けてみましょう。みなさんが弾くメロディーが聴こえますか?Thank you, Reka Nagy!!
ガボットとは?
ガボットとはバロック時代の踊りのひとつで、リュリの時代にはとくに人気がありました。この曲にみられるように2分の2拍子だったり、4分の4拍子で書かれる、遅くもない、速くもない、中庸のテンポの踊りです。また、この曲にみられるように、アフタクト(小節の途中)からはじまることもガボットの特徴です。
鈴木2巻のひとつ前の曲、トーマの作品もガボットです。また、これまで弾いてきたいろいろな作曲家によるメヌエットやブーレも踊りの一種です。
ちょっとむずかしい部分3つ
多くの生徒さんたちが戸惑う箇所が以下の3つのセクションです。
・10小節目後半から12小節目前半まで(セクションA)
・20小節ー21小節にかけて(セクションB)
・22小節目から23小節目にかけて(セクションC)
セクションA
ここで難しいのはリズムと弓の使い方です。
このレベルではまずリズムは拍を感じながら、頭で考えすぎずにまずは先生の演奏を真似ることを目指しましょう。弓の使い方のコツは スラーのない16分音符を弾くときに、弓をたくさん使わないことです。弓を動かさないと音がでないのはその通りなのですが、速く弾くときに弓をたくさん使うと遅れてしまいます。
セクションB
ここで難しいのは、
・拍を感じながら(数えながら)トリルを演奏すること。
(大抵の場合、この時点でトリル演奏そのものに問題がでる生徒さんはあまりいないんです。もちろん、トリルそのものにのちのち問題がでてきた生徒さんもいますが。)
・その直後に八分休符がありますが、そのお休みは決して長いお休みではないこと
・その際の弓使いがダウン+ダウンであること。
セクションC
ここで難しいのは音程ですね。4指を伸ばして高いドの音をとり、その後、ソのシャープでは2指を高く(3指のすぐ横におく)、そしてファのナチュラルでは1指をしっかり下げます。
むずかしい箇所に出会ったら
1.まずはそのセクションだけをきちんと弾けるようにしましょう。
2.数小節前からはじめても問題なく弾き通せるかどうかを試して、もし問題がでるようでしたら、繰り返し練習して克服しましょう。
3.最初から通しても無事に難なくそれらのセクションを弾き通せるかどうかも確認します。
a tempo ma piu mosso / ア テンポ マ ピュウ モッソ
21小節目に、小さな文字で a tempo ma piu mosso とあるのがみえますか?
a tempo = 以前のテンポにもどって
ma = しかし
piu= さらに、もっと
mosso = motion 動きのある
piu mosso = 以前より速く
以上のことばを続けてみると、a tempo ma piu mosso は 以前のテンポで、でも 以前より速く となります。
ん??? どういう意味? ですよね。(笑)
20小節目の poco rit. (少しゆっくりに)でテンポをゆるませてたのち、弾き手の能力によって、21小節目に 以前のテンポに戻ってもいいですし、速く弾ける人は以前のテンポよりも速く弾いてみてもいいですよ という風に理解できるかしらとおもいます。
以前のテンポよりも速く といわれれば、ではどれくらい速く???と感じますよね。少しだけ速くしてもいいですし、はっきりと違いがわかるくらい速くしてもいいですし、あなたならどちらがいいなと感じますか? ただし、大切なことは、速くしても演奏がくずれないこと。このように、できる方は少しずつ「自分が感じること」を表現してみましょう。
ちなみに、Allegretto は Allegro ほどでなく = 元気すぎずに 私風にいえば あまり速く弾き過ぎなくてだいじょうぶですよ という意味。
動画(音源)のご紹介
以下の音源では、以下の5種類をご利用いただけますので、ご自身にあったものをタイムスタンプを使ってご利用くださいね。最初のふたつは最終形の例です。
・ヴァイオリンとピアノ (piu mossoにするとどんな感じになるでしょう?)
・ヴァイオリンとピアノ (a tempoにするとどんな感じになるでしょう?)
・メトロノーム ♩=72 での練習。通してうまくいかなかったら、セクションA, セクションB+Cの部分練習も忘れずに。
・メトロノーム ♩=95 での練習。通してうまくいかなければ、セクションA、セクションB+Cの部分練習も忘れずに。
・メトロノーム 2分音符=55 での練習。
よろしかったら、こちらもどうぞ:
ボッケリーニ 「メヌエット」[鈴木ヴァイオリン教本2巻][篠崎バイオリン教本3巻]
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2 thoughts on “リュリ 「ガボット」(鈴木ヴァイオリン教本2巻)”