ポジション移動の練習はいつから? そしてそのコツ

ヴァイオリン演奏において、大切なテクニックのひとつにポジション移動(シフト・シフティング)があります。

ポジション移動を学ぶ理由

ポジション移動を学ぶことで、ヴァイオリンで演奏できる音域が広がります。ヴァイオリンはソプラノ楽器ですから、より高音へと音域を広げていくわけです。

また、楽曲にあった音色を選べるようになります。A弦で弾ける音をD弦で演奏することにより、より温かな音色を求めたり、D弦で演奏できる音をG弦の高いポジションで演奏することでより力強い音を選んだり などが可能になります。

ポジション移動の練習はいつから?

篠崎バイオリン教本では第2巻の終わりのほう(75ページ)に 「第3の位置を…この本と併用練習して先へ進みなさい」とあり、Suzuki Violin School (revised edition) では Book 2 の終わりにすでにサードポジションのエクササイズが掲げてあります。

どちらにしても、ファーストポジションにおいて、シャープが3つ、フラットが3つくらいまでのすべての調に触れ、音程についての理解や音感もある程度確立され、落ちついてきて、篠崎バイオリン教本3巻、そして Suzuki Violin School (revised edition) Book 4 にサードポジションが使える曲がはいっているため、それまでに準備をはじめましょう。ということですね。

Hohmann’s Practical Method for the Violin (ホーマン ヴァイオリン教本)においては1巻、2巻、3巻を通して、ファーストポジションを勉強し、シャープ6つ、フラット5つの調まで(簡単に)触れられるようになっており、その後、4巻でポジションの勉強がはじまります。

Wohlfahrt 60 Studies では Vol.1 (no.1-30)ではファーストポジションのみ、そして、Vol.2(no.31-60)では主にファースト、サード、そして少しセカンドポジションを使った練習曲がおさめられています。

私は楽器にライン(1指と3指のところ)をつけるので、そのラインも少しずつとりはずし、ポジション移動の勉強をするときには ラインなしでファーストポジションで演奏できるようになっています。そして、これは生徒にもよりますが、サードポジションを勉強するときに、もう一度ラインをしばらくの間つけたりもしています。

ふたつのポジション移動の方法

ポジションの移動方法にはふたつあります。

1.親指と手全体が同時に移動する方法

これは手のかたちをほとんど変えずに水平移動をして新しいポジションに移動する方法です。

2.親指を先に新しいポジションに移動させる方法

これは親指を新しいポジションの方向に移動させてから、ほかの指(手)をあとから動かす方法です。

はじめてポジション移動を勉強するときには、私は1番:親指と手全体を同時に動かす方法 を覚えてもらうようにしています。ポジション移動がなめらかに、速く、そして手に負担なく おこなえるからです。

ポジション移動のコツ(3つの動き)

ポジション移動のときには、1.ゆるめる(Release) 2.移動する(Shift) 3.落とす(Drop)の3つの動きをすることになります。

1.指先と親指の圧力をゆるめる (Release)

演奏時には(ときにもよりますが)ある程度指先に圧力がかかっているので、指先は指板近くまでおりています。その圧力を緩めて、指を弦上にもってきます。写真が少しずれてしまっていますが、下の写真の真ん中の矢印を左右に動かしてみてください。圧力がかかっている状態、ゆるめた状態が比較できます。

2.弦上で指をすべらせて移動 (Shift) 

親指と弦上の指をゆるめたら、指を弦上ですべらせて、目的地(新しいポジション)まで移動します。ファーストからサードまでは単に肘の角度を小さくし、他の部位は基本的には同じポジションに保ちます。(より上のポジションに移る際には、肘を内側にいれ、手もヴァイオリンのボディの側面にくるようにしたほうがスケールや速いパッセージなどは弾きやすかったりしますね。)

3.新しいポジションで弾く音のところにきたら、再び必要なだけの圧力を加える (Drop: 指を落とす=置く ) 

新しいポジションまで腕を移動したら1の写真のような動きが反対に行われます。つまり、指先の動きは弦上から指板のほうへとおろされます。

*** Rlease, Shift, Drop は Sassmannshaus先生の言葉です。***

よくある問題

ポジション移動になれない生徒さんたちは、この 1.指先と親指の圧力をゆるめる ということが上手にできていないことが多いですね。ファーストポジションである程度安定感をもって演奏できるということは、楽器もきちんと、左手に頼らずに支えられているはずです。自分を信じて、ある程度の脱力ができるようになりましょう。

また、ポジション移動を速くしなければ!ととても急いでしまい、ポジション移動前の最後の音をおろそかにする生徒さんもよくみられます。最初のうちは丁寧にゆっくりと練習し、腕や手にポジション移動の動きをしっかり覚えさせると同時に、耳もよく使い、しっかりと聞きながら練習を重ねましょう。

よろしければこちらもどうぞ:

ポジションの移動 ホーマン

セヴシック op.8, no.10

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