Q. ヴァイオリンはむずかしい楽器ですか?
A: 単刀直入に言えば、ヴァイオリンはむずかしい楽器だと思います。が、あまり演奏の質にこだわりすぎず、楽しみのために弾く ということであれば、あまり気負わずに、とにかくやってみることをおすすめできる楽器です。 むずかしい楽器のひとつではありますが、私の生徒さんで、まったくもってどうしても演奏が困難 という方は大人でも子供でもいませんでしたので、あまり むずかしい、むずかしい、と意味もなくハードルを上げてしまうのもどうかと思います(笑)。以下、もう少し詳しくみていきましょう。
ヴァイオリンは なぜむずかしいの? –姿勢や動き–
ヴァイオリン演奏時の姿勢や、演奏時の動きは、日常生活に密着したものではありません。鎖骨のところに楽器をもってきたり、左腕を少し内側にねじるようにしたり、弓のように長い棒をコントロールしながら動かし続けるなど、日常生活ではあまり使わない筋肉や感覚も使うため、ある意味少し不自然です。大人になってからはじめてヴァイオリンを習われる方々はよりそのように感じられるのではないでしょうか。
ヴァイオリンは なぜむずかしいの? –左手–
ヴァイオリンは、ピアノやギターとは違い、左指をおく指板には目印となるようなものがありません。
ですので、演奏する人が(腕、手、)指の筋肉に覚えさせること(マッスルメモリー、muscle memory)で、また、耳を鍛えることで、だんだんと正しい音程が取れる場所に左指をおけるようになっていきます。
私の場合は、とくに最初のうちは、指板にラインを貼ってあげて、正しい位置に指を置くように練習してもらいます。そうすれば、練習中に、正しい音程を聴き続けることにもなるので、大きな負担がなく、少しずつマッスルメモリーと耳の両方が訓練できます。
音程は奥深いもので、最初のうちは、音程のターゲットが広いのですが、専門的な域に入ると、そのターゲットがどんどん小さくなっていきます。
学びたての頃は、だいたい左側のまるのなかに音程がおさまればよい、左側の面積すべてが、たとえば、ラの音、という感じに指導しますし、演奏している本人もそれで満足です。
が、だんだん上手になり、耳の訓練も重ねて、音程に対しても繊細になってくると、右側の小さなまるから外れると、もう別の音のように聴こえてきたりするのです。
そして、演奏曲の調やキャラクターによって、ターゲットのなかの音を少し高めにしたり、低めにしたり、というコントロールを行うことで、(そうです、この右側の範囲のなかで、高めだったり、低めだったりがあるわけですね)曲のもつキャラクターを充分に引き出し、表現し、聴衆に伝えられるようになります。
音程をとるのが難しい楽器ですし、そのうえ、最初は調弦(4つの弦を正しい音程にあわせる)も難しいので、レッスンの際には先生が調弦します。ご自宅でのレッスンの際に、ずっと調弦が大きく狂った状態で練習するのもあまりよくないですよね。
ヴァイオリンは なぜむずかしいの? –右手–
左手もそうですが、右手、つまり、弓のコントロールは、これもまた美しい音をだすためには、繊細な感覚が必要ですし、一番基本的なストローク、デタシェからはじまり、スタカート、スピカート、マルテレ、ソティエ、リコシェ、トレモロ などなど、いろいろな弓の使い方があり、どのレベルを目指すのかにもよりますが、自分の楽器の最高の音を、演奏中常に引き出し続けられるようになるには、何年もかかります。
弓の支え方(持ち方)も、なかなか最初はむずかしく、実は、一通りではなく、支え方(持ち方)もいろいろなスクール(流派)により、変わってきます。
ヴァイオリンは なぜむずかしいの? –楽器の特性–
ヴァイオリンはソプラノ楽器、つまり、他の楽器に比べるとだせる音域が高いため、オーケストラや室内楽などのアンサンブルではメロディーを演奏することが多い楽器なので、注目を浴びることも多いのですが、楽器のサイズが他の楽器よりも小さく、たくさんの細かな音を弾くことが可能なため、他の楽器に比べると、速く、細かな音を弾く役割を与えられることも多いです。もちろん、程度にもよりますが、速く弾く のもなかなか難しいこともありますね。
でも、意外とだいじょうぶ!
ヴァイオリンに対してのハードルを上げてしまっているかもしれませんが(笑)、実際に取り組まれると、思ったほどではないかも、と感じる方も多いですね。
下手なヴァイオリンの音の例として、「のこぎりで音をだしているような音」「ギコギコ」などと例えられることがありますが、実は、そんなことはなく、私の生徒さんのなかで、これは子供でも、大人の方でも、一番最初に音をだしてもらった際にそんな音を出した人はひとりもいません。(笑)
その他、ヴァイオリンを通して得られること
ヴァイオリンを学ぶことで、高い集中力、分析力、時間管理能力、コツコツと積み重ねる能力、(ある程度の)精神的な強さ、壁にぶちあたったときの姿勢、また、オーケストラや室内楽を勉強するようになると、コミュニケーション力(これは先生との間でもある程度培われますね)なども養われます。
ヴァイオリンは基本的にはひとりだけで弾く機会のほうが少ないため、音楽を通して、お友達をつくることもできます。日本からアメリカに越してきて、言葉になれなくても、音楽を一緒に奏でることで、コミュニケーションがとれたりすることもあるようです。
私はある時期から先生に恵まれ、すばらしい師弟関係を築くこともでき、私の宝となっています。
最後に
ヴァイオリンは、レベルにもよりますが、繊細な感覚、音感が必要なので、難しい楽器のひとつですが、ヴァイオリンを学ぶことで得られる喜びや、その他、プラスになることがたくさんあります。やってみたい!と思われたら、とりあえず、レンタルの楽器でよいと思いますので、ぜひ一度、学んでみていただけるとうれしいです。
いろいろなお悩みなど、ブログやメール、オンラインツールを使い、お話できることもあると思いますので、どうぞコメント欄やお問い合わせページより、お声がけください。
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インドの踊りの8大流派のことを調べていたら、『使用する楽器』がサーランギだけでなく『ヴァイオリン』とあったので意外に思ったことを思い出します。インドで弾かれるとヴァイオリンは完全にインドの音になっていますね。アイルランドのフィドルも独特です。アメリカでもたぶんアイルランド系が持ち込んだカントリーウエスタンのヴァイオリンも独特。そういう人たちは『音色に魅せられ』て難しいとかはまったく考えず、楽器にのめり込んでいったのではないかと言う気がします。
Roughtonさま、
コメントありがとうございます!
おっしゃるとおりですね。あまり構えすぎても弾けません。私も最初は よい音とはなにか すらわからないところから、ただただ、自分もできるんじゃない?という強い勘違いと憧れからはじまりました。(笑)今となっては、いろいろなことを知りすぎて(といってもまだまだ知らないこともたくさんですが)、生徒さんを導くときに、逆に構えてしまうこともあります。でも、それに気づけるので、うまくいっています。お話できてうれしいです。ありがとうございます。Roughtonさまのところにも伺いますね。