「先生、ぼく、学校のオーケストラで、セカンドヴァイオリンの一番うしろの席になったんだ。。。」
「どうしたの? それでがっかりしているの?」
「うん。 だって、セカンドヴァイオリンより、ファーストヴァイオリンのほうが えらいんでしょ?
そのうえ、ぼくは、セカンドヴァイオリンの一番うしろなんだ。」
「あら、あなたは知らないの?
セカンドヴァイオリンはとても大切な役割を担っているのよ。
確かに、ファーストヴァイオリンを担当すると、わかりやすいメロディーを
高音で弾けて、聴衆の注意を引きやすいわね。
コンサートマスターもファーストヴァイオリンだし。(笑)
ファーストヴァイオリンは ある意味、オーケストラの顔 ね。
だけれども、セカンドヴァイオリンは、内声 といって
オーケストラの 心臓 に近い部分を受け持っていると思って。
人間も、心臓がきちんと働いていなかったら、生きられないでしょう?
心臓をはじめ、いろいろな臓器がさまざまな働きをきちんとしているからこそ、
身体がしっかり動き、健康が保たれる。
音楽も同じなの。
おのおのの楽器がそれぞれのパートの担っている音楽的表現をしっかりとすることで
音楽にいのちが吹き込まれるの。
先生もプロのオーケストラのセカンドヴァイオリンの一番後ろで
何度も弾いたことがあるわ。」
「えっ?? 一番うしろで?」
「そうよ。後ろの席はね、指揮者とも距離があるし、前とも距離があるし、
それでも、前で弾いているニュアンスをしっかりキャッチしないといけない。
全体をみながら、聴きながら、聴こえることに反応し、
上手に役割を果たすのは、とても難しいものよ。
あなたのオーケストラのなかで、大切でない人なんていないの。
みんなそれぞれが大切だし、みんながいるから成り立つのよ。
みんなで助け合って、協力しあって、だからこそできるものがあるの。
だから、あなたが肩を落とす理由は何もないのよ。
もしかしたら、あなたになら、
セカンドヴァイオリンの一番最後の席をしっかりやってもらえるって、
オーケストラの先生が思ったのかもしれないわ。
笑顔を忘れずに、まずは自分が与えられたものをしっかりやってみましょう。
あなたも、あなたの音楽も、かけがいのないものなのよ。」
こんなお話もあります:二本の指でチャイコフスキー協奏曲を弾くヴァイオリニスト
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