「英語で長調、短調と書く時は、長調は大文字で、短調は小文字で(例えばG Majorとg minor)書くのが一般的なルールなんですか?」
ブログを読んでくださった方が、上のようなとてもよい質問をくださいました。
ありがとうございます! 今日はこちらについて書いてみようと思います。
英語、そして、各国の音名表記
まず、英語において、音名は、
C D E F G A B
イタリアやフランスでは:
Do・Re・Mi・Fa・Sol(So)・La・Ti(Si)
日本では小学校でも音楽の授業のときにある程度ソルフェージュに親しみますし、音楽用語にイタリア語が多いことからも、音楽におけるイタリアの影響はとても大きいので、日本語では上記が日本語の発音にアレンジされ、いるのかしら、と思っています。
日本語では:
ど れ み ふぁそ ら し
日本音名は:
ハ ニ ホ へ ト イ ロ
ドイツ語では:
C D E F G A H
ツェー デー エー エフ ゲー アー ハー
私は普段、英語をよく使っているので、子供たちを教えるときに
「アルファベットと同じよ。A, B, C, D, E, F, G…次は…」
というと、頻繁に元気よく
「H ! 」
と答えてくれるので
「残念!音楽にはHはなくて、またAに戻るのよ」と導きます。(^^)
英語における調の表記
そして、調に関しては
長調が Major (カタカナで書くと メイジャー)
短調が minor (カタカナで書くと マイナー)
となります。
長調と単調を表記する場合の 大文字 vs 小文字?
上記で、大文字、小文字を使い分けていますが、大文字、小文字どちらで表記しても間違いではありません。
例えばCDの場合
例えば、CDにおける表記をみてみると:
Rachel Podger Bach Complete Sonatas and Partitas for Violin Solo の場合
Partita nr.3 in E major
Sonata nr.2 in A minor
となっています。
Frank Peter Zimmermann Prokofiev Complete Violin Works の場合
Violinkonzert Nr.1 D-dur
Violinkonzert Nr.2 g-moll
となっています。
上記の方々はイギリスの方、ドイツの方なので、アメリカの演奏家といえば…
Hilarly Hahn Plays Bach の場合
SONATA NO.1 in G MINOR
PARTITA NO.1 IN B MINOR
けれども、上記すべて、アメリカのレコード会社ではないので…
アメリカのソニークラシカルを検索してみると
Jascha Heifetz Plays Great Violiln Concerttos の場合
Beethove Violin Concerto in D major
Bruch Violin Concerto in G minor
となっています。
CDの場合はカヴァーデザインが優先されるかとも思うので、次に教材をみてみましょう。
学生用教材の場合
アメリカでとても一般的な、私も使っている学生用教材、Solos for Young Violinists という曲集をみてみると
Viotti Concerto No.23 in G major
Beriot Concerto No.9 in A Minor
Haydn Concerto No.2 in G Major
などと、びっくりするくらい(笑)不統一です。
手元の古い版になりますが、Suzuki Book 5 violin part をみてみると
Vivaldi Concerto in G Minor
Veracini Gigue from Sonata in D Minor
となっています。
このようにどのように表記しても間違いではありません。
明らかにわかりやすいのはどちら?
けれども、こちらを比べてみてください:
A Major / A Minor
A Major / A minor
A Major / a minor
慣れもあるかもしれませんが、すぐにわかるのは私自身は3番目だと思います。
楽譜を読むときも、例えば、サイトリーディング(初見演奏)をする際も、音のグループの仕方で、読みやすかったり、読みにくかったりもします。
それと同じように、長調、単調の表記も わかりやすくはっきりと ということで、長調に大文字を使い、単調に小文字を使う のが良いと考えています。
その考え方がどこから来ているかというと…
なぜわかりやすくはっきりとさせる必要があるのか?
ハーモニーを勉強する際に
英語でハーモニー(和声)を勉強する際に、長三和音(Major triads)は大文字のローマ数字 短三和音(minor triads)は小文字のローマ数字 で表記する、と学ぶので、その影響で、大文字・小文字を使い分ける という表記が広まっているともいえるように思います。この場合は、やはり、違いを明らかにするために、という目的だと思います。
例えば、以下は C Major (ハ長調)のスケールのうえに、3度の関係で和音を構成したものです。
なんだかちょっと難しい言葉が並んで、びっくりするかもしれませんが、注目していただきたいのは、ローマ数字です。Majorの和音のときには大文字(I, IV, V) そして、minorの和音のときには、小文字(ii, iii, vi, vii) を使います。
また、Fundamentals of Piano Theory by Keith Snell & Martha Ashleigh という若い方々が音楽理論を勉強するのに、よく使われる教材がありますが、こちらの Level Four の29ページに以下のような表記がでてきます:
“Triads of Major Scales
A triad may be built on each degree of the Major scale.
Each triad is labeled with a Roman numeral.
Major = upper case Roman numeral
minor = lower case Roman numeral
diminished = lower case Roman numeral and ° “
注目していただきたいのは、太字にした部分、長三和音(Major triads)は大文字のローマ数字 短三和音(minor triads)は小文字のローマ数字 で表す。となっています。
つまり、英語でハーモニー(和声)を勉強する際に、違いを明確に記すためこのようなルールを学ぶので、長調を表すときには大文字で、短調を表すときには小文字で、例えば、イ長調を A Major、イ短調を a minor という表記も広まっているのだと思います。
音楽の表現そのものもそうですが、クリアに、わかりやすく というのは、人とコミュニケーションをとるうえで、大切ですものね。
すばらしい質問をありがとうございました!
私なりの回答なので、充分でないところもあrかもしれませんが、またみなさまからいろいろなご質問をいただき、一緒に考える機会があればと思います。
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とてもわかりやすい記事で質問に答えていただいてありがとうございます!
和声のルール等知らないこといっぱいでした。わかりやすさは誤解の少ないコミュニケーションのために重要ですね。自分もその表記法真似させてもらいます。
choco_beerさん、
こちらこそ、すてきな質問を投げかけてくださって、ありがとうございました!
どのように表記しても間違いではないのですが、私自身は「ひとめでわかる」を選択しています。
またなにか気になることがあったら、ぜひ一緒に考えてみたいです☆