ヴァイオリンは基本的にはメロディー楽器なので、ギターやピアノのようにメロディーとハーモニーを奏でられる楽器と比べると、ヴァイオリンひとつのために書かれた無伴奏作品はそれほど多くはありません。私は一時期、無伴奏ヴァイオリン作品にとても興味を抱き、無伴奏リサイタルを毎年行っていた時期があります。ピアノと一緒でないと、音色的に非常に限られることもあり、最初は先生には反対されましたが(笑)
バッハの無伴奏作品はいつから勉強をはじめるのですか?
クロイツエル「42の練習曲」32番以降は重音(ダブルストップ)やコードの練習で、バッハの無伴奏作品のための準備をすることができます。もちろんその前に触れる ドント 24の練習曲(クロイツエルとローデの準備)作品37 の19番以降も使えますね。
私はクロイツエルの32番以降の勉強をはじめた頃に(先生が変ったこともあり)バッハの勉強をはじめました。以下にご覧いただけるように、パルティータ3番の最後からひとつずつ学び、2周してから、イザイに進みました。2周しても上手に弾けず、何度も繰り返し勉強しなければならない作品なのだな とその頃に気づきました。(笑)
私は以下の順番で先生に導いていただきましたが、他の先生と勉強している生徒さんたちは、重音を含まないもの を 全体像からは切り離して、とにかく単品で学ぶ というかたちをとる場合もあるようです。確かに、大きな作品群ですし、私の場合は フーガを学ぶのにはかなりの時間を要したので、若いうちからどんどん触れさせて、弾かせて、というご意向なのでしょうが、あまり早くから学んでも、フレーズなどがとれなかったり(先生に教えていただいても、表現できなかったり)、音楽的な指づかいができない場合などもあると思いますので、私も自分の先生と同様に、クロイツエルに到達してから、譜読みが難しくないもの から生徒たちに導入していくことがほとんどです。もちろん、オーディションなどでどうしても弾かなければならない、というケースもあり、非常に苦労をしたこともありましたが。。。
ASTA ( American String Teachers Association) では バッハ 無伴奏作品 がでてくるのは Level 8 以降です。例えば、ベリオ 協奏曲9番、ベートーベン ロマンスヘ長調、ドボルザーク 4つのロマンティックな小品、ハイドン 協奏曲ハ長調、ヴィエニアフスキ 伝説 などのレベルです。下のチャートをみてもわかるように、やはりこのくらいのレベルになってから勉強するほうが、生徒さんたちにも、先生方にも、無理がないように思います。
また、バッハの無伴奏作品を学ぶ前に、私は テレマン 12のファンタジー から数曲学んだりもしました。
以下のチャートは、その他の団体でだしている難易度です。
The Royal Conservatory of Music Examination Syllabus, Introductory through ARCT(Associate of the Royal Conservatory of Toronto) | USA (state unknown) All-State Orchestra Solo Repertoire List (out of 20) | ||
Partita no.2 | Giga | Level 8 | 12/20 |
Partita no.3 | Bouree | ||
Minuet I and II | |||
Gigue | |||
Partita no.1 | Corrente | Level 9 (Viotti concerto no.23, Mozart concerto in G Major k.216 etc) | |
Partita no.2 | Allemanda | 8/20 | |
Corrente | 15/20 | ||
Sarabande | |||
Partita no.3 | Gavotte en Rondeau | ||
Sonata no.1 | Adagio | ||
Sonata no.3 | Allegro assai | ||
Sonata no.1 | Siciliana | Level 10 (Kreuzer, Fiorillo, Ddont op.37) | |
Presto | (Viotti concerto no.22, Kabalevsky, Conus, Beethoven Romance in G Major, Wieniawski Legende etc) | 10/20 | |
Sonata no.2 | Andante | ||
Allegro | |||
Sonata no.3 | Adagio | ||
Larto | |||
Partita no.1 | Allemanda and Double | ||
Sarabande and Double | |||
Tempo di Bourree and Double | |||
Partita no.3 | Preludio | 16/20 | |
Loure | |||
Sonata no.1 | Fugue | Performer’s ARCT | |
Sonata no.2 | Fugue | ||
Sonata no.3 | Fugue | ||
Partita no.2 | Chaconne | 19/20 |
私がたどった道のり
前出ですが、私はクロイツエル教本を学んでいる途中で先生が変ったこともあり、そのときにバッハの無伴奏作品を学びはじめました。前の先生は「難しいから」といって、バッハを勉強することはとめられていたので、新しい先生について、バッハを勉強できると言っていただけたのは本当に大きな喜びでした。確かに難しい作品群ですが、譜読みでも時間がかかりますし、音楽表現を考えると、リサーチも含め、それ以上に時間がかかるので、あまり後に伸ばしすぎるのもよくないですね。私は以下の順番で学んでいきました。
パルティータ3番
パルティータ3番 ジーグ
パルティータ3番 ブーレ
パルティータ3番 メヌエット I & II
パルティータ3番 ガヴォット
パルティータ3番 ルーレ
パルティータ3番 プレリュード
パルティータ1番
パルティータ1番 アルマンド と ダブル (ダブルは変奏の意味)
パルティータ1番 クーラント と ダブル
パルティータ1番 サラバンド と ダブル
パルティータ1番 テンポ ディ ブーレ と ダブル
パルティータ2番
パルティータ2番 アルマンド
パルティータ2番 クランテ
パルティータ2番 サラバンド
パルティータ2番 ジグ
パルティータ2番 シャコンヌ
ソナタ1番
ソナタ1番 アダージオ
ソナタ1番 フーガ
ソナタ1番 シシリアーノ
ソナタ1番 プレスト
ソナタ2番
ソナタ2番 グラーヴェ
ソナタ2番 フーガ
ソナタ2番 アンダンテ
ソナタ2番 アレグロ
ソナタ3番
ソナタ3番 アダージオ
ソナタ3番 フーガ
ソナタ3番 ラルゴ
ソナタ3番 アレグロアッサイ
みなさんの体験もぜひお知らせくださいね。
よろしければこちらもどうぞ:ヴァイオリン協奏曲の難易度:私がたどった勉強の道のり
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