みなさんは ヘンデル 「私を泣かせてください」をご存知でしょうか?とても有名な作品のようで、もしかしたらどこかで耳にしていたのでしょうが、本当に出会ったと感じたのはつい数日前のことでした。今日はこの曲についてお話ししましょう。
ヘンデルについて
ヘンデルはバッハと同じ年に生まれ、時代をともにした後期バロック時代の作曲家です。ドイツ生まれですが、イタリアに渡り成功し、その後、イギリスに渡り活躍。イギリスに帰化しています。
ヴァイオリンを学ばれている方々には、6つのヴァイオリンソナタ、管弦楽曲「水上の音楽」、そして、ハレルヤ・コーラスで有名なオラトリオ「メサイア」などにとくに親しまれているのではないでしょうか。
もちろん、鈴木2巻、篠崎バイオリン教本1巻には ヘンデルのオラトリオ「ユダス・マカベウス」のなかの「合唱」が、また別のヘンデルの作品 ブーレ は、鈴木2巻や篠崎バイオリン教本2巻におさめられています。
ヘンデル 「私を泣かせてください」(Leave me so that I may cry / Let me lament)
ヘンデルはオペラでも有名です。この「私を泣かせてください」というアリア(うた)は、ヘンデルがロンドンで書いた最初のオペラ「リナルド」(1711) の第2幕(Scene 4)でソプラノ歌手によって歌われる、ラルゴ(大きな、ゆったりとした感じ)のとても美しい曲です。
敵側の魔法使いに囚われの身になった女性、アルミレーナが、傲慢で強引な敵側の王様に 自分のこころをあげる と愛を告白されるのですが、彼女は自分が本当に愛する男性、リナルド への想いをつらぬこうとします。囚われて逃げることもできず、祈ることしかできない。彼女は 過酷な運命に涙をながそう、ため息をつかせてください と歌います。歌詞は以下のとおりです。
Lascia ch’io pianga
mia cruda sorte,
e che sospiri la libertà.
Il duolo infranga queste ritorte
de’ miei martiri sol per pietà.
どうか泣くのをお許しください
この過酷な運命に
どうか自由にあこがれることをお許しください
わが悲しみは、打ち続く受難に鎖されたまま
憐れみさえも受けられないのであれば wikipediaより
今の時代にも通じるもの
この曲は確かに 愛のうた でもあるかもしれませんが、日本語の歌詞だけをみると、なんだか今の私たちの状況にも置き換えることができるようにふと感じました。パンデミックを機に、なんだかみえない力に囚われ、以前のような自由がなくなりました。数日前、私は差別ととらえられる言葉を吐きかけられ、非常にこころを痛め、傷つき、大きな怒りを抱いています。このような怒りや悲しみの気持ちを味わうのははじめてです。パンデミック前には考えられないことでした。
そんなとき、私はこの うた にある楽譜を通して出会いました。自分の頭のなかでうたい、ヴァイオリンで弾いてみて、歌詞を知ることなく、そのシンプルな音楽の力にとても励まされ、この うた について知りたいと思ったのです。そして、できたら私以外の人とも分かち合いたいと思いました。
今はまだまだあの非常な不快感や怒りを抱いています。けれども、「もし」このようないやな気持ちを乗り越えることができれば、人として、きっとまたもうひとつ階段を上ることができると信じ、私のことを気にかけて、あたたかな声をかけて、励ましてくれる人とともに前に進もうと思います。
音楽にはすばらしい力があります。
ヘンデル 「私を泣かせてください」 ヴァイオリン二重奏
シンプルな美しさを大切にした、ヴァイオリンを学んでまだ長くない方々にも弾いて楽しんでいただけるアレンジメントです。楽譜は 「お問い合わせ」ページ( https://www.dearviolinstudents.com/ja/contact/ ) よりお問い合わせくださいね。
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