カイザー ヴァイオリンのための「36の練習曲」はいつから?

「先生は、カイザーはいつ頃から導入していますか?」と ほかの先生からたずねられたので、今日はそのことについて書いてみようと思います。

 カイザー 36の練習曲 はヴァイオリンを学ぶ者にとって、とても重要な練習曲集のひとつ。ヴァイオリンを志すものは必ず通る1冊といえます。

ハインリッヒ・エルンスト・カイザー (1815-1888) はドイツのヴァイオリン奏者、ヴィオラ奏者 また、教育者、作曲家です。

カイザー 「36の練習曲」 を使う目的

私は、初歩的なテクニック、そして、読譜力、音楽性 を養うために使っています。

跡で述べますが、私の場合は、だいぶ遅くから導入をはじめることで、カイザーにあまり時間をかけすぎないようにしています。

篠崎バイオリン教本における短編編纂カイザーとその理由 

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私自身は、篠崎ヴァイオリン教本 で育ったため、カイザーに触れるのは、割りに早かったように思います。篠崎ヴァイオリン教本には、篠崎先生が短縮編纂されたカイザーが使われているからです。

篠崎先生はがこのような編纂をされた理由は、

1.カイザーは「初心者の指導用とするには各練習曲が、あまりに長すぎる

2.「まだあまり読譜力もついていない生徒が、カイザーを練習しているのを見る時、… 譜を覚えるだけに相当の労力を要し、曲中の大切な目的である技術の進歩が達成できずに終わっている場合が非常に多い

3.「短い部分を、しっかり弾かせ、いろいろの運弓法を訓練させた生徒の方がはるかに効果があった

(篠崎ヴァイオリン教本第ニ巻 45ページ 第二部 カイザー編纂に就いて より)とされており、私も大きくうなずくことができます。

短編編纂カイザーは万人に効果があるか?

けれども、この教本で育った私は、カイザーのエッセンスは吸収できたけれども、読譜力は不十分で、長い曲を弾くための集中力やスタミナに欠けていたように感じます。もちろん、これは、この教本を使ったことだけによるわけではなく、当時私がついた指導者の指導の結果でもあるともいえます。

ですので、私自身は、本来書かれたとおりのものを、生徒たちに与えています。

私の生徒たちのためのカイザー使用法とその背景にある思い

生徒たちの年齢、そして、能力によっては、確かに、カイザーの練習曲は長すぎるのも確かなので、そのような生徒たちには、3段のみ、5段のみ、半ページのみ、1ページのみ、などとセクションに区切って与え、そのセクションがある程度きちんと弾けるようになったら、その部分は終わりとし、再び戻ることなく、その次のセクションへすすみながら、全体を終える、という形をとっています。

週に1度のレッスンで、このカイザー「36の練習曲」全曲を終えるには、長い時間がかかります。毎回のレッスンで1曲を終えられたとしても、9ヶ月。毎回のレッスンで1ページを終えられたとしても、12ヶ月と2週間 という歳月を要します。(これは私の手元の G.Schirmer版のページ数によるものです)

生徒たちは、毎日必ず質のよい練習ができるとも限らず、私が指示したことをきちんと覚えていられるとも限らず、また、私の住むアメリカでは、夏休みがあり、感謝祭があり、クリスマスがあり、と、ご家族での休暇やその他学校イベントなどでレッスンをときどきお休みされる方々もあります。つまり、前出以上の歳月がどうしても必要になります。けれども、長い時間を使っても、これくらいのレベルのときに、きちんと読譜力をつけ、頭を使って楽器を演奏するということに触れることは、とても大切なことだと思っていますし、後にも詳しくお話しますが、私のところではカイザー導入が遅いので、その頃には、読譜力も充分に身についており、初歩的なテクニックは安定してきているため、生徒たちは不要に長い時間をかけずとも終えられるレベルに到達しています。

そもそも、練習曲とは??

ヴァイオリンの技術の習得、そして、音楽性を養うには、カイザーだけをしていても、大きな前進はありません。生徒たちの能力にあった音階、練習曲、曲、そして、若い生徒たちに欠かせない、ポジションの理解(指板のマッピング)のためのエクササイズ、よいヴィブラート習得のためのエクササイズなどをはじめ、生徒の必要に応じて、シュラディエックやセヴシックなど、ひとつの技術に焦点をあてたエクササイズなども与えていかなければなりません。もちろん、与えるだけではなく、きちんとアプローチできているかどうかにも注意を払わなければなりません。

することはたくさんあります。ですので、カイザーのレベルでは、あまり完璧なアウトカムを求めすぎないことも大切だと思っています。カイザーの「36の練習曲」の英語のタイトルは Kayser – Elementary and Progressive Studies, op.20。つまり、カイザーの目的は、Elementary「初歩的な」技術の習得にあります。カイザーの先には、以前掲げたように(以下のリンクをご覧くださいね)、まだまだたくさんの練習曲が待っていますし、練習曲は、すばらしい作品を演奏するための準備に使われるためのものです。

ヴァイオリン練習曲 (エチュード) の種類と道のり – Dear Students 私の大切な生徒たちへ

カイザーはいつから導入できるのか?そして私の場合

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さて、本題が後回しになってしまいました。(^^) 

では、カイザーは、いつから導入できるのでしょうか?

篠崎ヴァイオリン教本では、第二巻の途中、第1ポジションにおいてさまざまな調(といってシャープ3つ、フラット3つまで)が弾けるようになってから、導入されています。

私は、短縮版を使わないので、私自身の前出の苦い経験を補うためにも、まずはウォールファールト 60の練習曲op.45第一巻を、生徒の能力によりますが、鈴木ヴァイオリン教本の第三巻くらいのレベルから導入し、読譜力を強化しながら、さまざまな調に対応できるようにし(ウォールファールトにおいても、第一巻No.1-30では、シャープ3つ、フラット3つまで)、ウォールファルト第ニ巻No. 31-60を使いながら、第3ポジションも学び(サードポジションなどには、私はまた別の補助教材も使います。ちょっと徹底しすぎているかしら^^;)1ページの練習曲であれば、しっかりと弾き通せるるだけのスタミナと集中力を養い、カイザーの第二巻(No.13-)へ進むようにしています。ただし、ウォールファールト第二巻の重音は後回しにしています。そして、カイザーの第一巻は、初見を養うために使用したり、10番のアルペジオなどは、短く区切ってのエクササイズとして与えたりします。

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つまり、ウォールファールト 60の練習曲op.45 をほとんど終えた状態で、カイザーの第二巻を導入している、ということになります。つまり、サードポジションにも親しんだあとで。随分、遅い導入ですよね。

私は学生時代からもう20年以上ヴァイオリンを教えていることになりますが、現在のところ、だいたい上記のような形でカイザーを導入しています。生徒たちはとてもよく成長しているので、ちょっとがんばりすぎているかしら?ここまで徹底しなくてもいいかしら?と思う点もなきにしもあらず。ただ、練習曲などはやればやるほどよいという印象を持っています。本当にしっかりとした力強い根を育てるためには、欠かせません。将来的には、もう少し効率のよい方法も見つけられるかもしれませんが、これまで、私のところで育った生徒たちは、カイザーまでくると、あまり難なく弾いてくれ、どちらかというと進みも速いです。1回のレッスンで、1曲終えられる生徒も多々あります。

一方、他の先生のところから来る生徒は、年齢や能力によって、カイザーをすぐに与えますが、読譜力が弱く、時間をかけて根気よくアプローチしなければならないケースのほうが多いように感じられます。

多くの生徒たちが、他州の大学へ進むため、高校を卒業するころに、私のもとを巣立っていきます。それまでに、「初歩的な」技術を確立する、もしくは、それに関して、何がよく、何がよくないのか をしっかり理解してもらうことで、その後、自分で続けることもある程度は可能になります。私は常に生徒たちに自分の足で歩けるようになって欲しい。そういう思いをもって、生徒たちと向き合い、導いています。

1848年・1872年に出版されたカイザー「36の練習曲」長い時間を経て、私たちも恩恵を受けているすばらしい作品です。これからも上手に使って、ヴァイオリンとより一層親しんでいきたいですね。 

 

よろしければ、こちらの記事もどうぞ:

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エチュードってなあに?

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