ザイツ ヴァイオリン協奏曲2番3楽章 [練習のてびき]

この記事は2021年4月19日, 5月31日に更新しました。

ザイツ ヴァイオリン協奏曲2番

私たちヴァイオリンを勉強するものにとってのはじめての協奏曲がザイツによるものですね。
Suzuki Violin School3巻までとは違い、1つの曲(楽章)のなかにも、いくつか違った性格(曲の感じ)が提示されるので、それらを表現するために必要なテクニックも広がります。

フリードリヒ・ザイツ(1848ー1916)はドイツのヴァイオリニスト・コンサートマスター・指揮者でした。学生のためのヴァイオリン協奏曲を8つ書いています。

協奏曲2番作品13(もしくは12、どちらが正しいのでしょうか?ご存知の方があればお知らせくださいね)は以下のような3つの楽章からなっています。

1楽章:Allegro non troppo

2楽章:Adagio

3楽章:Allegretto moderato

Suzuki Book 4 により、私たちは今回、3楽章のみを勉強します。

調性・拍子

ヴァイオリンを鳴らしやすい調性のひとつG Majorが使われており、途中、e minor, D Majorなども上手に織り込まれており、曲の雰囲気に変化があります。

拍子は8分の6拍子。Suzukiの教本だけをみると、ここではじめてでてきますね。8分音符を1拍とし(=8分音符をひとつと数えて)、ひとつの小節に6拍。これは3拍子を2つ、という風にとらえることもできます。これだけですでになんだかエレガントな雰囲気と、「動き」が感じられるのではないでしょうか?

Allegretto moderato とはアレグロほど快活でなく、かつ、moderato には 適度な、穏やかな という意味があるので、あまり速すぎないテンポの選択があっているのではないかと思います。

 

ザイツ ヴァイオリン協奏曲2番3楽章 全体のロードマップは?

楽譜を最初にぱっとみただけでも、なんとなく4つくらいのセクションに分けられるのがわかりますか?

このあたりは、たくさん音符があって、黒いから(笑)いそがしそうだな、とか、このあたりは、長い音符やスラーがたくさんあるので、うたう感じなのかな、とか。

みなさん、大抵の場合、とにかく早く弾きたい!とヴァイオリンをにぎりしめて、よ~し!と最初の音からひとつずつ虫眼鏡でみるように勉強をはじめることのほうが多いかと思いますが、こうして、絵画をみるように、楽譜を遠くから眺めて、大きくとらえることも大切なことです。こうして、曲を通しての旅のロードマップの全体像をなんとなく頭に思い浮かべてみましょう。この作業は、ひとつひとつを虫眼鏡でみるステップをはじめてからすることもできますよ。

 

冒頭の8分音符の練習方法: mm.9-16

最初のセクションでは、お休み(8分休符)を次の音への準備としてつかうことをおすすめします。

最初のアップボウを弾いたら、次の8分休符の際に、弓を弦のうえにおき、しっかり準備をしてから次の音を弾くようにします。録音のなかで私が ON! といっているのはそういうことです。ON!といいながら、弓を弦上においています。そうすることで、次の音をしっかりと発音し、きちんと弾くことができます。最初のセクションにみられるすべての8分休符で同じようにするといいですね。

seitz concerto no.2 3rd movement beginning

  ℗ 2020 dearstudents

 

スタカートをみると、どうも弓を弦から離したくなる生徒がたくさんいますが、弓は水平に動かしましょう。私たちはいつも楽器を鳴らし続けなければならないのですが、その際には、弦をしっかりと震わせるために、弓を水平に動かさなければなりません。ヴァイオリンにおけるスタカートは、ピアノの演奏の際のような上下の動きではなく、弓を水平に速く動かすことが大切です。

よろしければこちらもどうぞ:

「お休み」はお休みじゃないの?

弓の動かし方:ダウンとアップ、本当はそうじゃないの?

 重音の練習方法:mm.19-20

重音のセクションは雑になってしまうことが多々ありますね。

それを避けるために、落ち着いて、ステップを踏んでみましょう。

生徒によってはまず楽譜通り弾いてみて、うまくいかない場合に以下の練習をとり入れるほうがやりやすい場合もあります。

録音はこのセクションの一番下にあります。

ステップ1:メロディーだけ弾いてみましょう。

seitz concerto no.2 3rd movement mm.19-20 melody

**Suzuki Book 4 new edition では 1小節目(19小節目)後半のスタカートは省かれています。

ステップ2: 右手の練習のためにオープンストリングで弾いてみましょう。

a. まず20小節目の最初の拍のコードをオープンストリングで弾いて右手を慣らします。(下の楽譜2小節目の最初です。)

b. mm.19-20 をオープンストリングで弾いてみましょう。この2小節を弾いている間、右手がどのように動くのか、しっかり意識できるようになります。

 

seitz concerto no.2 3rd movement practice as open strings

c. そうしたら、左手をつけてみましょう。できあがり!

 

表情豊かに、けれども、しっかり数えて!: mm.49-67

ときにタイが上手にできない場合もあるので、しっかり数えて、感じて、リズムを正しく演奏しましょう。もし、難しい場合には、録音でしているように、すべての音を8分音符で弾いてみるのもひとつの方法です。 

  ℗ 2020 dearstudents

 このセクションはうたう部分ですね。 espressovo e tranquillo = 表情豊かに、そして、落ち着いて とあり、調も短調にかわります。これらのキーワードをもとに、あなただったらどのように演奏しますか?

Rit. (=m.67)

Rit. (=ritardando) は だんだん遅く という意味ですね。そして、次の小節には a tempo  またもとのテンポに戻って とあります。実は、私は短調に変わる49小節目から(伴奏はもちろんその前から)、その部分の曲の感じを表現するために、少しテンポを遅くしています。そして、68小節目の a tempo では、冒頭のテンポではなく、だいたいですが、短調のセクションのテンポに戻っています。68小節目からもエレガント(優雅)な感じを保ちたく、また、84小節目からの ブリリアント(輝かしい)セクションとは音楽の感じが違うことをしっかりと表現したいからです。 

まず音程、そして 優雅に:mm.68-75 (=mm.76-83)

72小節目が難しいと感じる生徒もいますね。ミのシャープはファのナチュラルと同じ音程です。2種類の指使いがしるされていると思いますが、2の横にナチュラルがついているのは、ミのシャープはファのナチュラルとしてとりましょう、という意味です。 

f:id:dearstudents:20200506160513p:plain

seitz concerto no.2 3rd movement mm.72 and 80 intonation

音程は以下の録音のようになります。

 

左側の指使いは、ミのシャープはそのままミのシャープとしてとらえ、1指を半音上げてとり、次ぎにでてくるファのシャープは1指のすぐとなりにおきます。最初にファのシャープを弾いていますので、1指のとなりに2指をおくときに、最初と同じ場所に2指をおくことになりますね。 

右側の指使いは、ミのシャープをファのナチュラルととらをるため、一度おいた2指を半音さげ、次にファのシャープをおくときには、2指のすぐとなりに3指をおきます。

このセクションは grazioso = gracefully 優雅に です。8分の6拍子のなかでのスラーのついた軽やかな16分音符の連なりや流れをあなたならどのように表現しますか?

 

輝かしく!でも、急がないで!:mm.84-93

このセクションはスタカートなしで、まずはあわてずに練習しましょう。8分音符として以下の録音のように練習してみるのも効果があります。

 ℗ 2020 dearstudents

どの音でどの弦を弾いているのか、しっかりわかって弾かなければなりません。

あわてて右手と左手のタイミングがあわなくなってしまう生徒たちもいるので、気をつけて練習しましょう。あわてずに、余裕をもって弾けるテンポで練習することで、うえの2点をしっかりクリアすることができます。

このセクションは brillante = brilliant 輝かしく。16分音符がたくさん並んでいると、忙しい印象を受けるかもしれませんが、16分音符が並んでいるだけでも、すでにエネルギーが高くなり、輝かしいですよね。音楽そのものが輝かしく変化しているので、無理をして速く弾こうとしなくても大丈夫。それよりも、まずはいい音できちんと弾けるようにしてみましょう。

 

重音; m.94, 95, 108, 108

もし、難しいと感じたら、まずは慣れるために、重音だけをとりだして弾いてみましょう。重音を弾く際には、弓を弦に押し付けるのではなく、2本の弦にしっかりと弓の毛が触れる弓の角度をみつけましょう。

mm.94-95 は risoluto = 力強く。重音では2本、3本の弦を弾くのですから、すでにエネルギーがあります。正しく練習して、いい音がだせれば、この力強い感じがでてくるはずです。

m.103 からは piu mosso = more motion = faster 前よりも速く ですね。もし余裕があれば、そうしてみましょう。重音をしっかり練習し、自信rをもって演奏できれば、輝かしい曲の終わりを表現できます。

重音の練習方法、例えば:

 

seitz concerto no.2 3rd movement mm.94, 95, 107, 108 

 ℗ 2020 dearstudents
録音が少し雑な感じになってしまっていてごめんなさいね。
学んでいるみなさんは、ぜひぜひ丁寧に練習を重ねてください。

ザイツ ヴァイオリン協奏曲2番3楽章アレグレット モデラート 演奏例と譜読みサポート動画のご紹介 

今回は、ピアノの伴奏にあわせての演奏例、そして、一番最初に譜読みをするときのためのメトロノームを使っての演奏を録音してあります。先生によっていろいろと解釈がわかれる部分もあると思いますので、以下の動画を参考にしつつも、先生のご指導にしたがってくださいね。ピアノときちんとあっていないところもありますが。。。雰囲気は充分におわかりいただけることでしょう!

同じ曲ですが、最初にあげたものが少し速すぎるという声もあり、少しだけテンポをゆるめたのが下の動画です。こちらには ピアノ伴奏のみ も含めています。こちらの伴奏はMs.Accompanistさんによるものです。ありがとうございます!

よろしければこちらもどうぞ:

ヴィヴァルディ ヴァイオリン協奏曲ト短調1楽章

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